2008年06月10日

入院先でタカオに。

軽い肺炎で、入院することになった。

横のベッドのネームプレートには、「スズキタカオ」という名前。
高校時代にケンカ別れした彼と、同姓同名だ。

わあ・・・タカオと同じ名前じゃん・・・
でもま、ありきたりな名前だし同一人物なわけないな。
寝てるっぽいから明日あいさつしよ。

私はベッドに横たわり、天井を見上げた。






タカオのことを思い出すと、未だにむかつく。

自転車を二人乗りしたとき、タカオがスピードを出しすぎて私だけ転げおちた。

カメラの現像を頼んだけど、タカオはカメラをまるごとなくした。

真夏の遊園地でタカオは、ソフトクリームを3つ買ってきた。私達は2人。
「なんで3つも買ってくんのよ、溶けるじゃん。」
「だって食べたかったからさあ〜。」
案の定溶ける速度に追いつかず、ソフトはどろどろにとけてタカオの服をよごした。
私はお気に入りのハンカチを貸した。
未だに返してもらっていない。

あいつとの付き合いって、ほんとにろくな思い出無い・・・。

なんで付き合うことになったんだっけ?
むかつくことはイロイロと思い出せるのに、肝心なことは思い出せない。







しばらくして家族も帰宅し、看護師さんもいなくなった。

この部屋にいる人間は私と、隣のスズキタカオさんの二人。


夜の病院って不気味・・天井が落っこちてきそう



無題.bmp



そんなことを思っていた矢先

「おとなりさんってさ、サトミでしょ?」

カーテンの向こうから、私の知っているスズキタカオの声がした。




シャッ




カーテンを開ける音がする。

私も思わず、カーテンを開ける。

宙に足を吊られたタカオがいた。骨折してるようだ。


「よお、やっぱりサトミじゃん!元気ぃ?」


ここをどこだと思っているんだか・・・

やっぱりタカオは、むかつく。



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2008年06月07日

針と糸

無題.PNG


針は、思った。

俺は糸とは別に動きたい、と。


糸も、思った。

僕は針より先に動きたい、と。



ただ、それを動かしているのはニンゲンであって

ニンゲンは、裁縫をするとき
針と糸を別々で使うことはないし
糸だけで直接、布を縫うこともしない。


ある日、針は思った。

俺は裁縫箱の中にいるから、糸と一緒に使われてしまうんだ。
俺が一人でいれば、きっと単体で俺を使ってくれるはずだ。
針は、自分にくっついていた糸をひっこぬき、裁縫箱を飛び出した。

それをみつけたニンゲンは、
「うわ、こんなとこに針が落ちてる、危ないな」
といって、タンスの上に針を置いた。

針はそのまま、そこで錆びてしまった。



ある日、糸は思った。

僕は裁縫箱の中にいるから、針より先に動くことが出来ないんだ。
僕が一人でいれば、きっと針よりも僕を先に使ってくれるはずだ。
糸は、針穴からするりと抜け、裁縫箱を飛び出した。

それをみつけたニンゲンは、
掃除機で吸い取った。

糸は、掃除機のゴミの中に埋もれた。



針と糸ははたして
自分の願いを叶えられたのだろうか・・・?





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2008年06月01日

石蹴り

小学校のとき、一緒に帰っていた友人Mと
無言でけんかをしたことがある。

原因は、石。

isikoeo.PNG

私は石を蹴るのに夢中になりすぎて、前方にMがいるのを忘れ
すごく思いっきり、蹴った。

それは見事にMにヒットし、彼女は歩くのをやめる。

眉間にしわを寄せ、くるりと向きを変えたMは
私がけった石をこちらにむかって蹴り返す。

すねに当たる。痛い。
(ああ、もっと小さい石蹴っときゃよかった。)
後悔しても遅い。

私はまたその石を蹴り返す。

互いにゆずらず、
蹴って、当たって、
また、蹴っての繰り返し。

「もうやめよう」と言ったら、負けなような気がして、
当たらないように逃げたら、負けなような気がして、
なかなかやめられない。


そのとき、
私の蹴った石がガードレールに当たって


カーン!


と甲高い音を立てる。


「ブフッ。」


Mも私も、同時に吹き出した。





ああ、子どもに戻りたい。

そう思う今日このごろである。



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2008年05月24日

りすくんが学校にこない

隣のりすくんは、今日もまた休み。

「あいつ、昨日原っぱで見たぜ?」
ねこくんが言う。

実はぼくも見た。
池から顔を出したとき、りすくんが一生懸命何かしてたとこ、見たんだ。
学校に来ないで、いったいなにをしてるんだろ・・。
放課後、おうちにいってみよっかな。



「おおい、りすくん〜ぼくだよさかなだよ〜」

りすくんの家は木の家だ。
ぼくは最初遊びに来たとき、どれがりすくんの家かわかんなくて
木という木に話しかけていた。

りすくんはそれを草むらから見て、笑っていた。
でも、もう何本目の木に住んでるのか、覚えられたんだ。


「・・・なに?」
りすくんが出てきた。

「なんで学校こないの?ぼく、隣いなくてさみしいよ。」

risu.PNG

「・・・しっぽがいやなんだ。」

「へ?」

「こないだ遊んでたらヤケド草に座っちゃって、しっぽがまっかなんだ。薬草も生えてなくってさ・・・。」

「ああ!それならぼくんちおいで!ぼくんちの池、薬水が湧き出てるところあるんだよ。そこにしっぽ、つけたら治るよ!」

「ほんとかい?じゃ、連れてってくれよ。」



りすくんは、しっぽが見えないようにハンカチで隠して
ぼくの家までやってきた。

「さ、ここだよ!ぼくが水のなかもぐるから、しっぽを水につけてね。」

おそるおそる、しっぽを水につけるりす君。

「わあああっ!いたあああい!いたいいたあい!いやだ!」

ちょびーっとしっぽを水につけただけなのに、すごい痛がりよう。

「ねえ!今ちょっとだけ痛い思いして治るのと、ずーっとしっぽ赤いまんまでみんなから見られるのと、どっちがいいのっ!」

りすくんはしっぽをにぎり、「な、治りたいよそりゃ!」と言った。

「りすくんがしっぽつけたら、早く治るようにぼくが水を送るからさ。10数えれば治るよ。ね、がんばろう!」

risu2.PNG

りすくんは泣きながら、しっぽを水につけた。

「ううう!」

がんばれりすくん!10だけだよ!ほらもう、あと8、7、6、5・・



りすくんのしっぽは、元通りかっこいいしっぽになった。

「な、さかなよ。おれが泣いてたこと誰にも言うなよ。」

「え?僕、水の中に居たからなんにも見えなかったよ。」

「そ、そっか!ならいいんだ!」

りすくんはかっこつけ。
でもほんとは泣き虫で、やさしくって、
一緒にいてとても楽しい、ぼくのともだち。

だからぼくは、りすくんが泣いてたことは
お父さんとお母さんにしか、言わないことにしようと思っている。

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2008年05月22日

二階からシャボン玉

しゃぼん.PNG

「リエコさんの絵は、なんというか・・・背伸びしすぎてる感じがするよ。もうちょっと基盤ができてれば、堂々とした格好いい絵になるんだけどなあ・・・。」

先生にそう言われた。
私は言われている意味がわからなかったし、ちょっとむかつく。

背伸びって、なに?
描きたいものを描いて、それがへたっぴだったら背伸びしてるってことになるの?

そりゃあ、基礎は全然勉強してないし、見たままに描くことも満足にはできないけど
私は人に見せるために絵を描いてるんじゃない。
自分が満足したいため、気分転換のため、そういうスタンスで描いてる。

背伸び?それは先生から見た私の絵の感想ですよね。
やめてください、なんかそういう見方。



・・・・ああ、こんな風にズバっと言えたらなあ。
リエコはそう思いながら、油絵教室を後にした。


でもさ、絵って
見てもらわないとなんにもならないんだよね。

私が描いて、私だけが見て、自画自賛してるだけだけじゃ
意味が無い。

誰かに見られてこそ、
誰かに感想をもらってこそ

絵だもんなあ・・・うーん。




なんか気分転換がしたくて
帰りにシャボン玉を買って、アパートの二階から飛ばした。

誰かがシャボン玉に気づいて、自分のほうを下から見上げることを期待して飛ばしているのに
下を歩いている通行人は、誰一人こちらを見上げない。

飛ばしても、飛ばしても、誰も気づかない。


シャボン玉って、みんなの上から飛ばしても誰も見ないんだ。
みんなの目線の高さから飛ばして、そこからふわふわと上に上っていくからつい、見ちゃうんだよね。
そうだよね。


基礎から、ちゃんと勉強しよう。
もう一回、鉛筆の使い方から、ものの見方を鍛えるところから、始めよう。


リエコはスケッチブックを開き、鉛筆でデッサンを始めた。


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2008年05月19日

カンガルー君のパン

ぼくの家は、パンやさん。

パパは週に一回、ともだちの分のおやつパンを焼いてくれる。
ぼくを入れて、ワニくん、ゾウくん、ネコくん、ヒツジちゃんの、5つ。

それをぼくがポッケに入れて、みんなに配る。

「やっぱり、ほかほかのパンはおいしいや!」
「いいなあ、カンガルー君、こんなおいしいパン毎日食べれて!」

まわりのみんながおいしいと言ってくれるのが、
喜んでくれるのが、ぼくはうれしくてたまらない。


ある日、となりのクラスのアリクイ君が、ぼくらがパンを食べ終わったあとにやってきて

「あ・・・もうなくなっちゃったかあ・・・。」

としょんぼりした。
僕はそれを見て、すごく残念な気持ちになった。

「ごめんねアリクイ君、また来週おいでよ。」
と言ってバイバイした。

今週から多めに焼いてもらうことになったので
今朝、6つのパンをポッケに入れようと思ったら、ひとつ、入らなかった。
僕のポッケは、まだ小さい。
パパやママぐらいあれば、もっと入るのだけれど・・・。

仕方ないのでひとつは、ハンカチにくるんで持っていった。

パンを配る時間になったけど、アリクイ君は来ない。
だから僕らはいつも通りパンを食べて、残りの1つをじゃんけんしようとしていた。

「ごめんねおそくなって!僕の分、ある?」
アリクイくんがギリギリのところで駆け込んできて、僕は内心ほっとした。

「はい!先週は足りなくて、ごめんね。どうぞ。」
僕はハンカチにくるんだパンを差し出す。

「あれ・・・あったかくない・・・。」
アリクイくんはまた、しょんぼり。

ああそうか、いつもパンがほやほやであったかいのは
僕のポッケに入れてるからだもんなあ・・・。

「ごめん、ポッケに入れようと思ったんだけど、5つしか入らなくて、えっと、、」

どうしよう、せっかく来てくれたのに、またアリクイ君をがっかりさせちゃった。
アリクイ君はパンを食べてるけど、なんかおいしくなさそう。

ど、どうしよう・・・。

かんがるー.PNG



「やい!アリクイ!」

いきなりワニ君がさけんだ。

「おまえ、こいつの気持ち考えてみろ!おまえの分ポッケに入らなかったからって、ハンカチにくるんでまで持ってきたんだぞ!ありがとうぐらい言えよなっ!」

アリクイ君は、ハッとした顔でぼくを見た。
ぼくは、涙が出そうで、小さい声で「ごめんね。」としか言えなかった。

そのあとアリクイ君は、一目散に走って、どこかに行ってしまった。

「なんだあ!あいつ。ひでえなあ。カンガルー、気にすんな。おれねこ舌だからさ、今度からハンカチの分食うよ。お前んとこのパン、冷たくてもすげーおいしいんだぜ!」

ねこ君がなぐさめてくれたけれども、僕はどうも、気が晴れないままみんなと別れた。

はあ・・・もうちょっとぼくのポッケが大きければなあ。
ポッケ以外に、パンが冷たくならない方法って無いかなあ。

そんなことを考えながら歩いていると、道の先に座っているアリクイ君が見えた。
ずんずんとこちらに近づいてくる。

「あ・・・その・・・。」
アリクイ君はしどろもどろな僕の手をいきなりつかんで、大きくて重たい枝を握らせた。

「それね、アリが集めた花の蜜がいーっぱい入った、僕のおやつ入れ。おいしいよ。あげる。」

「・・・なんで?いいの?ありがとう!」

「あと、パンのこと、ごめん。おれ、わがまますぎた。ごめんな。すごくおいしかったからさ、また食べたい。・・じゃあね!」

アリクイ君はそういうと、また走ってどこかへ行ってしまった。

家に帰ってそのことをパパとママに話すと、とっても嬉しそうな顔をして僕の頭をなでた。


次の週は、パパが、アリクイ君がくれた蜜をたっぷり使ったあまいパンを焼いてくれて、みんなで食べた。

ぼくはそのときのパンが、今まで食べたどのパンよりも
一番おいしい気がした。


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